駐車場を科学する⑯ リパークを例にとって

前回は、不動産業者が駐車場事業を起こす必然について書きました。
この不動産業者という立ち位置が、新たな事業形態を産んでいきます。

まず、当時は、時間貸し駐車場事業は、コインビジネスだと考えられていました。
駐車した時間の分だけ100円玉を入れる、当然、お釣りなんか出ませんでした。1000円札も使えない。そのため、両替機能を分担するため飲料の自販機の設置はmustでした。
(当時は、缶ジュース1本100円で10円玉も関係なく、時間貸し業者の方も罪悪感は希薄でした。)

ただ、我々不動産業者の方は、決してコインビジネスだとは考えず、フツーのサービス業だと捉えましたから、1000円札対応、釣銭の発行については当然の責務と考え、機械の開発に努力しました。
事業としての効率=収益性の観点からは100円コイン一本に絞った方が有利ですから、タイムズさんのやり方が間違えているとか、況や、遅れているなどとは考えたことはありません。ひたすら、立ち位置が違ったのです。

更に、時間貸しと月極めの混合型の運営を開始しました。
オーナー様のところへ営業に行くと、この土地、どうにかしてくれんかね、というお話が良くでます。その土地の面積が広いのです。時間貸しのニーズはどうみても20台分ぐらいなのに、駐車場の面積は100台分ぐらいある。このような場合、純粋に経営効率を追求すると、その一部をお借りして時間貸し事業をやることになります。ただそうすると残りの土地をどうするか、という話になり、残りは地元の不動産屋さんが旧態依然の月極めをやることになります。それではオーナー様も面倒で大変です。

更に大袈裟に言うと、我々は、駐車場の絶対面積は少ない方が良いのであって・・・宅地が減らないから・・・そのためには土地のパフォーマンスをとことん引き出す必要もあった、ということです。(方法は次回、書きます。)
そこで、我々自身も月極め駐車場の管理を受託し、そのノウハウの蓄積に努めて、更に時間貸し・月極めの混合型の運営ノウハウを確立していきました。
この混合型を「メガパーキング」と命名し、事業の一部門として育てていくことにしたのです。

駐車場を科学する⑮ リパークを例にとって

前回、駐車場の管理機器の話を書いたら、図らずもタイムズさんのことに言及してしまいました。そのまま、更に機械のことを書きたいのですが、機械の話、駐車場の管理に対する考え方を述べると、どうしても何故「不動産屋」が駐車場の仕事をするのか、という問題に触れざるを得ません。何しろ一番手のタイムズさんは、不動産屋ではないですし、そのため機械とか駐車場管理に対する考え方が異なるからです。

世に言う不動産屋は、実に色々な仕事をしており、特に駐車場の仕事をしても不思議では無いかもしれません。ただ、その場合、駐車場と言ってもその多くは月極め駐車場であり、オーナー様の土地の管理の一環でした。我々も、オーナー様の名代としての不動産業者と交渉することも多々ありました。しかし、それだけでは、不動産業者が駐車場事業を起こすことの説明としては不足です。では、何故、リパークはわざわざ起業してまで時間貸し駐車場事業を始めたのか?

唐突で恐縮ですが、我が国の国土は約3,775万haあります。その内、我々宅地建物取引業者の仕事の対象となる宅地は、どれくらいあるか?
例えば昭和50年ですと、124万haであり、これは国土全体の3.3%になるようです。このとき道路はどうか?89万haで、2.4%でした。昭和60年は宅地150万ha、4.0%、道路107万ha、2.8%、平成13年になると宅地は180万ha、4.8%、道路128万ha、3.4%とのことです。
国土交通省「土地利用現況把握調査」のどっかのページを見て下さい。)

調査の度に増加しているとはいえ、「宅地」の少なさに唖然としてしまいます。それに引き換え、道路の占める面積の大きいこと。常に宅地に対し、70%以上の面積を占めます。
私の子供の頃、道路は常にクルマで溢れ、どこも渋滞していました。このままだと東京はクルマに征服されてしまう。また宅地建物業者になったら、しょっちゅう計画道路の問題に直面します。このままでは東京中が道路になってしまう。そんな感じを持っていました。そう、誰かが制御しなければ、東京中、クルマ様のものになってしまう。人間様が健康で文化的な生活をしようと思ったら、クルマ様に必要な空間を制御しなければいけない。それは誰だ。
クルマ自体は世界に冠たる自動車メーカーが製造します。それを走らせる道路は、建設省(当時)が作り且つ管理します。では、クルマを停めるところは?今までキーパーソンが居なかったのでは?と思いました。
なら、不動産業者がやろう、なにしろ駐車場は宅地の一部であり、他の用途とはトレードオフになるのだから。国土の適切な利用を実現するのは、我々、不動産業者の使命だと思いました。

駐車場を科学する⑭ リパークを例にとって

規模も立地もバラバラな駐車場をどう管理するか?

前回述べたように、都市のインフラとしての駐車場は、立地も規模もバラバラです。
大きな駐車場だったら管理人を置く「有人管理」で良いですが、小規模だったらコスト的に無理です。大体、20台分ぐらいしかない駐車場に管理人さんに居て貰うスペースはありません。
もう、ここは「無人管理」しかないです。
また、駐車場という概念を考えると、複数の車両が駐停車するところを想定すると思いますが、よく考えてみると、1台のクルマが駐車する空間が駐車場なのであって、駐車場というのは元々、個々別々の1車室をいうのですね。
ということは、個々バラバラの管理が辛いというより、1車室毎に管理しなければならない、ということが課題だったわけです。

では、どうしよう。
そこで思い出したのが、病院などの駐車場に立っていたネギ坊主のようなメーターです。
ああ、あれは使えないか。
すぐに調べは付き、「日本信号」という一部上場の会社が作っていることが分かりました。
日本信号さんには、当時、私が勤務していた会社の役員室での、役員の在席状態を把握するシステムを作っていただいており、丁度良いんじゃないかなあ、などと考えていました。

そんな折り、ある夜、六本木はロアビルの横の道路を鳥居坂の方に歩いていくと夜目にも煌々と照らされている20車室規模の駐車場がありました。なんだろう。近くによって見てみると黄色に黒と赤のデザインでTIMESとありました。ええッ!もうあるじゃん!個別車室管理の駐車場が・・・。
だからお坊ちゃん育ちはダメだね。世の中の方々は、もっと早いんだよ、もっと色々やっているんだよ、と深く納得しました。
(もう他人が手掛けている事業なんか、やる意味がない、と一時は時間貸し駐車場事業を諦めました。それなのに何故始めたか、いつか書きたいと思います。新規事業を起業する際、起こりがちな問題ですから。)

そして、そこで使われていたのが、日本信号さんの機械だったのです。
早速、日本信号さんに連絡を取り、当方にも売っていただけないか、とご相談したところ、結構です、但し、TIMESさんを通じて買って下さい、というお返事でした。
これはちょっとまずい。

もう会社と会社のお付き合いで日本信号さんのシステムを購入しよと決めていたのですが、これではこちらの手の内がバレバレにバレてしまい、何かとやりにくくなります。
どうしようか。困った末に、ええい、新たなメーカーを探そう、と考えを変え、あるメーカーの製品を採用しました。駐車場の管理機器の話も面白く、やはりつまみ要らずでビールがガンガン進むのですが、これは話がズレ過ぎなので、今回は書きません。

日本信号さんの機械は丈夫で、作動も安定していました。私どもが採用した機械は夢に溢れていましたが、如何せん故障が多く、苦労させられた、と言うことです。
ここでも、当初、書きましたとおり、「技術」が新たな産業を産む、という一つの例証が出現した、ということですね。
何と言っても、技術、また実現する製品が、重要だと思います。

駐車場を科学する⑬ リパークを例にとって

我が国の駐車ニーズとはどんなものか?

今、街を見渡せば、駐車場だらけです。
テレビで街の風景を写すと、しょっちゅう「リパーク」の看板が出てきます。そうでなくとも他社の看板が写ります。時間貸しの駐車場は、もうすっかり街の風景の一部として馴染んできました。
では、何故、こんなに普及したのでしょう。

当初(1993年頃)、私は時間貸しの駐車場事業をやるか、やらないか色々な観点から考えました。
そのとき、先ず考えたのは、人は何故駐車するのか、という動機論です。
しかし、これは悩むほどのことではありませんでした。それは何故、クルマが必要かという理由の裏側で、どこかへ行って何かしたいからです。用事があるからです。
ということは、クルマが停まっている時に人は何かするわけで、言ってみれば、クルマは停まってなんぼ、という存在なのだなあ、とつくづく思いました。

では、何処に停まりたいか、当然、用事のある地点のすぐソバです。Aさんに用事があれば、Aさんの家の前、ビルの5階だったら5階の入り口の前に停まりたいのだと思います。
(ついに、自宅の中まで車で行けるマンションが出来るという情報には驚きました。台北の話ですが、とうとうと言う感じですね。)http://www.kumagaigumi.co.jp/press/2013/pr_130926_1.html

前々回、香港の駐車場のことを書きましたが、我が国の場合、この目的地隣接、という要件が必要なので、モデルを少々修正する必要が出てきました。仮にですが、目的地まで片道徒歩3分とすると、1分80メートルですから80×3=240メートル、要は半径240メートルの円で埋め尽くされている必要がある、ということです。
更に大雑把に考えて、一辺500メートルのメッシュの中に1ヵ所は必要だと考えると、東京23区の面積が619キロ平米だと言われているので、619÷0.25=約2500、区部だけでも最低2500ヵ所必要だ、ということになります。当然、3分も歩きたくないわけですから、多分、この2倍や3倍は必要なんだろうな、と考えました。これが全国となるとどんな風になるんだろう、ちょっとした規模だなあ、と感慨にふけったことを思い出します。
停めたいところは半径240メートルとして、そこに何台停まりたいかはまた別問題です。キャパシティというか駐車場の収容台数ですね。ここは3台分で良い、ここは20台分は必要だ、そんなイメージです。では、こんなバラバラの規模の駐車場をどのように管理すれば良いのか、次に出てきたのは、この運営の問題でした。

仲間とこの問題を議論すると、つまみ要らずでどんどんビールが進みます。
では、どうやって解決したか、次回、述べます。

駐車場を科学する⑬ リパークを例にとって

我が国の駐車ニーズとはどんなものか?

今、街を見渡せば、駐車場だらけです。
テレビで街の風景を写すと、しょっちゅう「リパーク」の看板が出てきます。そうでなくとも他社の看板が写ります。時間貸しの駐車場は、もうすっかり街の風景の一部として馴染んできました。
では、何故、こんなに普及したのでしょう。

私は時間貸しの駐車場事業をやるか、やらないか色々な観点から考えました。
そのとき、考えたのは、人は何故駐車するのか、という動機論です。
しかし、これは悩むほどのことではありませんでした。それは何故、クルマが必要かという理由の裏側で、どこかへ行って何かしたいからです。用事があるからです。
ということは、クルマが停まっている時に人は何かするわけで、言ってみれば、クルマは停まってなんぼ、という存在なのだなあ、とつくづく思いました。

では、何処に停まりたいか、当然、用事のある地点のすぐソバです。Aさんに用事があれば、Aさんの家の前、ビルの5階だったら5階の入り口の前に停まりたいのだと思います。
(ついに、自宅の中まで車で行けるマンションが出来るという情報には驚きました。台北の話ですが、とうとうと言う感じですね。)http://www.kumagaigumi.co.jp/press/2013/pr_130926_1.html

前々回、香港の駐車場のことを書きましたが、我が国の場合、この目的地隣接、という要件が必要なので、モデルを少々修正する必要が出てきました。仮にですが、目的地まで片道徒歩3分とすると、1分80メートルですから80×3=240メートル、要は半径240メートルの円で埋め尽くされている必要がある、ということです。
更に大雑把に考えて、一辺500メートルのメッシュの中に1ヵ所は必要だと考えると、東京23区の面積が619キロ平米だと言われているので、619÷0.25=約2500、区部だけでも最低2500ヵ所必要だ、ということになります。当然、3分も歩きたくないわけですから、多分、この2倍や3倍は必要なんだろうな、と考えました。これが全国となるとどんな風になるんだろう、ちょっとした規模だなあ、と感慨にふけったことを思い出します。
停めたいところは半径240メートルとして、そこに何台停まりたいかはまた別問題です。キャパシティというか駐車場の収容台数ですね。ここは3台分で良い、ここは20台分は必要だ、そんなイメージです。では、こんなバラバラの規模の駐車場をどのように管理すれば良いのか、次に出てきたのは、この運営の問題でした。

仲間とこの問題を議論すると、つまみ要らずでどんどんビールが進みます。
では、どうやって解決したか、次回、述べます。

駐車場を科学する⑫ リパークを例にとって

前回、駐車場のモデルとして香港のWilsonParkingを挙げました。
都市型の駐車場モデルとして、納得感があったからです。

ただ、その後、自分で駐車場事業を立ち上げたわけですが、その時点で更に考えました。WilsonParkingのモデルが全てか?

駐車場事業をやるからには、
①我が国の駐車ニーズを満たす
②利用方法が簡便で、容易に利用できる
③事業スキームが簡便で、我が社の社員でも遂行できる
④環境と調和し、近隣から愛される
等々の前提条件を満たすことが必要でしょう。

<ちょっと寄り道…面倒だと思われたら飛ばして下さい。>
事業スキームが簡便でいわば誰でも出来る、ということを条件の一つとしたのは理由がある。実はバブルの末期、転勤先の仙台から連れ戻され、社長から新規事業を開発するよう命ぜられた。その時、開発した事業でもっとも収益性が高かったのは「航空機ファイナンス」だった。当時、資産家向け節税商品としては「レバレッジドリース」という手法が流行っており、私も研究したが、初めから「赤字」を出す、というスキームに馴染めなかった。そこでオペレーティングリースを組合スキームで行い、その組合員の資格を販売する、という手法を考えた。しかし、このスキームの説明が難しい。結局、販売する能力のある人員は、私ともう一人しかいない。それで49口どうやって売ろうか、と悩んだ経験があるからである。この航空機ファイナンスの仕事は、結局、エアバスを購入する直前でイラクフセインがクエートに侵攻し、湾岸戦争が起きた結果、世界の航空機需要が激減し、中止することになった。若しエアバスを買っていたら100億円をㇲってしまった人間として非難され、今こうしていられるか甚だ疑問である。
身の破滅は免れたが、次に事業を組み立てる時には、もっとハードルを下げようと心に誓った次第である。
レバレッジドリース http://hoken-kyokasho.com/leveraged-lease
オペレーティングリース http://hoken-kyokasho.com/operating-lease-2
湾岸戦争 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B9%BE%E5%B2%B8%E6%88%A6%E4%BA%89

<本題に戻る>
ところで、我が国における駐車ニーズってどんなものでしょう?
勿論、クルマを停めておきたい、ということなんですが。
次にこの駐車ニーズを分析してみましょう。

駐車場を科学する⑪ リパークを例にとって

このところ、時代の動きが速いので、駐車場に関しても未来論的は記述が多くなってしまいました。
ここで少し立ち止まり、昔話をすることをお許し下さい。
我が国の時間貸し駐車場の歴史というような大袈裟なことは書けませんが、リパークの揺籃期について少々コメントさせていただきたいと思います。

今から20年以上前、何かの折りに香港に行きました。まだ英国領の頃で今とはだいぶ違いますが、それでも憧れのノーマン・フォスターの設計による「香港上海銀行本店」など見学し、なかなか良い経験をさせて貰ったのですが、街を歩いていると矢鱈と目に付く建物がありました。それが Wilson Parking という駐車場ビルだったのです。
香港のあの狭い街で、あの膨大な駐車ニーズをどう吸収するか、WilsonParkingは見事にその解を示していました。
不動産屋だった私は当然、胸がときめきます。誰がやっているのか?どれくらいあるのか?どんなシステムなのか?矢継ぎ早に質問したのですが、当時の我が社の駐在員は答えられませんでした。当然ですよね。私だって「都市」の諸問題については問題意識は高かったものの、特に駐車場に興味があったわけではありませんから、現地の駐在員が関心のあろうはずがありません。ただ、経営しているのは サン・ホン・カイとかいう不動産屋のグループで相当デカい会社だ、香港だけでなくオセアニアの方でもやっている、という話でした。夜目にもくっきりと浮かび上がるWilsonParkingの文字、香港を離れてもいつまでもそのイメージは私の中に残っていました。


その後、リパークを創業した時は、遺憾ながら日本では二番煎じのようになってしまいましたが(この経緯についてはまた別稿で触れましょう)、私の頭の中のモデルは香港のWilsonParkingであり、ビル型だったのです。
そうこうしている内に、私自身、駐車場事業を始めることになりました。
種々検討の結果、今日のような形態になりましたが、ただ、都市型駐車場のモデルとしてWilsonParkingは非常に有力なモデルだった、しかも、今、ようやく我が国でも大型ビルの地下駐車場が一般利用に開放されてワークしだした、ということを書き添えます。

WilsonParkingについては、https://en.wikipedia.org/wiki/Wilson_Parking

             http://www.omiya-p.co.jp/australia_1.html

サンホンカイについては、Sun Hung Kai Properties - Wikipedia、

            Sun Hung Kai Properties - Home

等をご参照下さい。